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株式会社におけるバーチャル総会(オンラインを活用した総会)

緊急事態(感染症拡大等)下では、どのように総会を行えるのか

 新型コロナウイルスの影響を受けて、株主総会の延期や、代替方法などでお困りの法人は非常に多いと思います。
  2020年2月28日に法務省より、新型コロナウイルスの感染拡大で定時株主総会が開催できなくなった場合、延期をすることも法的に可能とする見解が法務省ホームページ上で公表されました。
 この時、あわせて「書面や電磁的方法により議決権を行使すること」や「総会をオンラインで行える可能性(バーチャル総会)」も、会社法上なしうる旨、示されています。
 本サイトでは、株式会社におけるバーチャル総会の実施方法や考え方について説明しています。

バーチャル総会の概要

 バーチャル総会について経済産業省ホームページにて示されている指針(ガイドライン)では、以下のような区分がなされています。

種 類
物理的
出席
(オンラインの)形式
(オンラインの)
議決権行使
(オンラインの)
質問
(オンラインの)
動議提出
バーチャルオンリー型
な し
出 席
バーチャル出席型
あ り
出 席
バーチャル参加型
あ り
参 加
不可
不可
不可

※ハイブリット参加型のオンライン出席者には質問権がないが、コメントを受け付けて回答することは可能とされている。

バーチャル総会の法的有効性

 バーチャル総会は株主の権利を制限するものではないため、株主全員の同意は不要で、法定決議事項でもないため、定款変更なども不要です。
 また、以下のような会社法施行規則の条項があるため、インターネット等の電磁的な通信手段を用いて、物理的な開催場所以外からの株主の出席を前提としていると考えられます。

会社法施行規則 第72条
1 ・・・株主総会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
             <2項省略> 3 株主総会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人、株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。

いずれの形式にて行うかについて

原則はハイブリット参加型

(1)現状の会社法上、バーチャルオンリー型の運営は不適法と考えられています。

→明文はありませんが、株主総会の「場所」の規定の解釈は「議長が存する場所ではなく、株主が出席することができる物理的な場所」を意味しているとされています。(2018年11月13日第197回国会法務委員会 第2号)

→そのほか、物理的な出席をすることは、株主の権利であり、それを奪うことは法律改正が必要とされています。

(2)総会のライブ配信の準備は必須となります。ただし、参加者のコメント機能適程度は構築する必要はあります

→なお、ガイドラインによれば、オンライン出席者からのコメント受付自体が必須とはされていません。

(3)出席株主に議決権行使が認められない(傍聴人に準ずるコメントは可能)ため、システム構築のハードルが低い。

ハイブリッド出席型も可能か

(1)ハイブリッド出席型は法的な意味でも出席と扱われます。ただし、オンライン出席を選択した時点で物理的な出席する権利を放棄したこととなります。(近澤諒・本井豊「バーチャル株主総会の実務」16頁)

(2)オンライン出席者は、物理的出席者と同等と扱われるため、取締役らは「説明責任を負う」また、オンライン出席者からの動議も提出できますが、物理的出席者とオンライン出席者の特性の違いを勘案し、両者の取り扱いに差異を設けることは認められるとされています。

→ガイドラインでは、オンライン出席とは、出席の態様として会社法上、株主に保障された権利ではなく、追加的な出席手段を提供しているということが強調されています(パブリックコメントにおいても、支持されている)。

  【考えられる差異の内容】
内  容
代理出席
物理的な出席者に限定すること
事前の議決権行使
直前に変更した行使を有効とする
質 問
回数、分量、期限を設けること、質問の取捨すること
動 議
物理的出席者に限定すること
実質的動議(議案修正動議)について棄権とし、手続的動議(議事進行上の動議)について欠席とすること
取り扱いが難しい動議をオンライン株主が提出することの制限
退 場
通信を強制的に途絶させること

 バーチャル出席型の考え方として、特にテキストによる事前提出の場合、議長が質問を「多くの株主にとって有意義なもののみ」取り上げることは、株主との建設的対話に資するとしてガイドラインで評価されています。ただし、経営陣にとって敵対的な内容であるということのみを理由として取り上げないといった恣意的な運営は許されないと考えられます。
 なお、動議についても、物理的な出席株主と異なり、オンライン出席株主の動議の取り扱いが難しいことから、実質的動議(議案修正動議)について棄権とし、手続的動議(議事進行上の動議)について欠席とすることといった制限は許容されると考えられているようです。

バーチャルオンリー型は現段階では推奨されていない

(1)現在、ガイドラインや多くの学術者がバーチャル株主総会で一定の運用を認めているのは、あくまで物理的な開催の存在を前提としているものばかりのため、バーチャルオンリー型では、それらをそのまま応用することはできないとされています(法的検討性の未熟)。

(2)コロナウイルスの流行時において、感染防止のために株主への出席自粛を要望するために物理的な出席以外の方法として、オンライン出席の手段を提供することには意義があるとされています。

→ウイルスの拡散・蔓延の状況にあわせて国から外出自粛要望が出されている状況において、感染リスクを抑える目的で株主の物理的出席を拒否する余地があるとされています(2020年4月2日、経済産業省・法務省による新型コロナウイルスに関するとりまとめ)。

→コロナウイルス対策として、株主総会の会場は不特定多数の人が集まる閉鎖空間であり、感染のリスクがあることを招集通知等で説明する対応がとられ、来場の自粛や議決権行使方法の置き換えする手段としてバーチャル株主総会を行うことは有効な手段として考えられます。

「合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど・・・会場に入場する株主の人数を制限することも、可能・・・その結果として、会場に事実上の株主が出席していなかったとしても、株主総会を開催することは可能」「事前登録をした株主を優先に入場させる措置を取ることも可能」(令和2年4月2日経済産業省・法務省「株主総会運営に係るQ&A」)。

バーチャル株主総会の適法な招集について

 バーチャル株主総会にて(オンライン参加のみならず)オンライン出席を適法に行うためには、取締役会にて総会の招集事項を決定する際に、物理的な開催場所とともに、オンライン出席方法に関する「アクセス方法、質問や動議の取り扱い、議決権行使の方法」などを決定しておく必要があります。 (具体的には、閲覧できるURL、ログイン方法(ID・パスワード)、質疑応答の方法、代理出席の制限、強制的通信遮断の可能性、通信障害リスクの説明など)

本人確認の方法と代理人の考え方

 会社法上、総会に出席し、議決権を行使できるのは基準日現在に議決権を有する株主として株主名簿に記載された者に限られるため、本人確認が重要です。
 ガイドラインでは、オンライン出席にあたって、株主ごとに固有のIDとパスワード(または固有のQRコード)を案内し、株主がログインする際に当該IDとパスワードの入力が必要となるシステムが推奨されています。

 なお、バーチャル株主総会では、物理的な出席に比べて株主本人が出席しやすいことから、代理人の出席を認めない(物理的な出席に限定する)ことは特段不合理な制限とはいえないとされています。所感としては、ガイドラインの全体を見る感じ、むしろ代理人を認めない方が良い、というようなニュアンスにも思えます。

肖像権の問題

 総会のビデオ撮影については、議長の権限で行うことができます(大地判平2・12・17)。ただし、これを公衆送信することは、物理的出席者の肖像権・プライバシー権を侵害しないか問題となるので注意が必要です。
 この場合、配信先が株主に限定されるのであれば、もともと物理的出席をする権利を有していた(それらの様子を見にくることができた)ことを踏まえると違法とまではいえないようです(ガイドライン7頁)。
 ただし、リアルタイムで配信されているという心理的プレッシャーから質問が躊躇されるため、質問者の氏名等は述べさせない(代わりに出席番号を述べさせる)等の対応は検討の余地があります。
 また、オンライン参加・出席者が撮影・録画することを禁止するなどもありえます。



 当事務所では、現在、システム開発会社と提携し、バーチャル総会の実現に向けた実証を行っています。現在、下記のような検討事項等も継続審議中ですが、導入を検討中の株式会社、社団法人、NPO法人、職能団体、自治会等ありましたら、ご相談頂けましたら、各種法人・団体それぞれ5社先着でモニター価格での支援をさせて頂きます。
 特にコロナウィルスの対策として検討する場合(緊急事態宣言が解除されるまでの実施)、物理的な総会に要する費用よりもはるかに安価での運営をできるようにサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

※2020年4月27日時点で、リアルタイムの議決権行使を伴いうる他社のWEB上のサービスの提供はありません。


バーチャル総会実施に関して、現在検討中の主な事項

オンライン出席者が決議事項ごとに的確にアクセス(ログなどによる把握)を記録するシステム

バーチャル株主総会における開催側と出席側には情報伝達の「双方向性」と「即時性」の確保

事前に行使された議決権の行使をリアルタイムに変更する場合のデータ連動

株主が一定数以上の上場企業の場合は、賛否や議決権行使の結果確認に関して、証券代行の集計システムとのデータ連携

アクセス集中の問題解消。なお、トラフィック分散の技術または、配信先を株主に限定することでアクセス数を制限する等を実証

その他、モニター依頼の企業様より挙げられた課題もあわせて検討中


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