特上カバチ!!第5話「娘へ!!亡き母からの贈り物」

 特上カバチ!!第5話のあらすじについてはTBS公式サイトで、ご確認ください。

特上カバチ!!行政書士から見たレビュー

 第5話はまったく業務ではないお話ですね。主役は大野の娘の杏とその恋人、甲斐洸。
 甲斐の実の父親の(正太郎 )借金が洸の名義でなされていたり、給与を勝手に受け取ってバクチで使っていたりする事件に田村らがボランティアでサポートするものでした。

 はじめに田村くんが依頼も受けずに父親の権限を悪用する正太郎に説得に行きますが、田村くんがカバチたれるための前提(息子が行政書士に依頼するには未成年のために父親の同意が必要)が欠けている点を突くなど、父親はなかなかの策士っぷりです。
 これは民法5条1項の「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」によります。

 また、民法818条1項「成年に達しない子は、父母の親権に服する」という原則のせいで親権者である正太郎は、子の財産を管理し、その財産を売ったり、管理したりする行為を代わりに行うことができるわけですね(これは後々のポイントとなります)。

 しかし、正太郎が洸の勤務先の経理担当者を騙し、給料を全額横取りした件。これは以前も紹介した賃金支払いの5原則の「直接払いの原則」から問題があるかと思います。田村君が主張していたのは、コレですが経理担当者の苦悩も考慮しての正太郎へのカバチだったわけですが、見事に返り討ちにあいました(汗)。
 まーもともと大野の娘に関する話なこともあって、今回もボランティアで田村が洸の友人として動くことになったわけですね。

 やがて、暴走した正太郎は、洸を一千万円の借金のかたに、闇金に売り飛ばすことを闇金と工作してしまいます。
 これを阻止したのが、田村と住吉の演技によって成功した民法753条の「成年擬制」という規定を利用する作戦です。
 成年擬制は「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成人に達したものとみなす」というもので、杏と洸を急いで結婚させた後、闇金の作らせた借用書の日付がなかった不備を利用して、婚姻後にあたる翌日(0時まで粘ったのはそういう理由からです)に父親、正太郎が一千万円の借金の借用書を偽造したことにしたわけです。
 二人が婚姻した後ですから成年擬制により洸は成年として扱われ、民法818条1項の親権は意味を成さなくなり、法的な効果が洸に帰属しないことになるのですね。

 尚、これを見て「未成年であることが怖い」「親ならこんなに好きにできるのか!」と思った方々! 実際にはこのようなめんどくさい方法で借金を無効にする必要はありません。
 というのも、親権者が代理権があることを悪用し自身や第三者の利益のため、あるいは子供の不利益となるような法律行為(利益相反)を行った場合は代理権の濫用として無効となるというルールがあります(民法826条、827条、93条但書類推など)。

 この濫用にあたるかの基準ですが、裁判例では

 「親権の行使は・・・子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存在しない限り、親権者の代理権の濫用があったといえない(最判平4.12.10)」

 というものですので、今回の正太郎のような行為は「親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる」と考えられるために当然、無効となるわけですね。

※この点について、とある弁護士さんの話では「子供が借りたことになっている以上、正太郎に「利害関係」が無いことになり、利益相反が否定される可能性があるとの事です(実際の裁判をして裁判官の判断に委ねることになりますが、そういう判例もあるらしいです)。

 もし利益相反で救われるのなら、取引した第三者は正太郎に返還請求や損害賠償請求をすることができますので、結局正太郎は自業自得で闇金に売り飛ばされることとなるでしょう。

ページトップへ
京都府京都市中京区御幸町通蛸薬師下ル 船屋町367 ロイヤルプラザ御幸町5階   Copyright (C) 2009 Hattori Administrative Legal Office All Rights Reserved.